陰陽石

いんようせき

 山方地域山方の南皆沢に鎮座する陰陽神社の御神体。もとは夫婦岩といって風雨の守護神として祀られていたといいます。徳川光圀が「陰陽石」と名付け、石の大きさを測り、

 

   陰陽山の陰陽石

陰石 東 長三丈三尺(10m) 横七尺六寸(2.3m) 厚八尺三寸(2.5m)

陽石 西 長二丈九尺(8.8m) 横一丈八尺六寸(5.6m) 厚六尺三寸(1.9m)

一、西の方の大きなるが陽石にして、内証は金剛界なり。東の方の小ぶりなるが陰石にして、内証は胎蔵界。晴れをば陽石に祈り、雨をば陰石に祈るべし。

一、東の方に岩くみあり、東へ流れ出たるを陰の峰といふ。西の方へ流れ出たるを陽の峰といふ。

 

との書付を、陰陽山の別当とした修験者 南蔵院(中島氏)に下されたそうです。

 

 陰陽石は、新生代新第三紀に発生した火砕流の堆積物からなる、小貝野層(おがいのそう)の凝灰岩です。断層で二つに切断され、その後の風化で特異な形になりました。しかし残念ながら、陰石は2011年3月11日の東日本大震災で崩壊してしまいました。

 書付に見える「陰の峰」と呼ばれる山上には、侵食された凝灰岩が庭石のようにならぶ珍しい光景を見ることができます。

(参考/『山方町誌 上巻』昭和51年、常陸大宮市歴史民俗資料館企画展示解説「常陸大宮の地下資源~地域をささえた宝物~」2013)