長倉の七夕

ながくらのたなばた

 那珂川に面する常陸大宮市御前山地域長倉は、江戸時代は水戸藩の川奉行が置かれ、近代も現市域でもっとも早く常陽銀行が支店を出した、繁華な商人の町でした。ここでは、市内で唯一商店街をあげての七夕祭りを開催しています。

 年中行事として各家で行われる七夕とは違って、仙台や平塚など、繁華街に豪華な飾り付けを行う「七夕祭り」は戦後始まり、昭和20年代の復興に伴ってお中元商戦の影響でイベント化して各地に広まったとみられます。常陸大宮市域でも、昭和30年代まで旧町村の中心商店街で七夕の飾り付けを行ない、上小瀬地区では昭和50年頃まで実施されていたそうです。しかし、後継者不足と財政的な負担面から廃止する地区が続出し、市内で現在も行っているのは長倉のみとなりました。

 長倉地区で七夕祭りが始まったのは昭和28年頃。当時長倉にあった合資会社「合同」の店先に宣伝用の竹飾りを置いたのがきっかけのようです。その後、地域の有志によって「七夕協賛会」が結成され、毎年月遅れの8月上旬の週末に、長倉の宿通りで七夕まつりが開催されています。壮麗な竹飾りは地元の商店や学校、個人の方が出品し、コンクール形式で競い合います。昔はそれぞれ手作りでアイディアをしぼったようですが、今では手作りする出品者は少数になっています。

 今では50数回を数える長倉の七夕まつり。夏の夕涼みがてら、古くから舟運で栄えた長倉の、今も残る町並に昔の面影をしのんでください。

(参考/広報 常陸大宮 平成17年7月号「ふるさと見て歩き 3」)